アクセス解析
FC2ブログ
読了:『嘆きの肖像画―英国妖異譚〈2〉』 
2006 / 08 / 10 ( Thu )  19:29
さてさて、「暑いから怪談を」・・・というわけじゃないんですが、ホワイトハートの怪談モノ?「英国妖異譚」の2冊目をサックリ読み終わりました。

『嘆きの肖像画―英国妖異譚〈2〉』篠原 美季 講談社X文庫ホワイトハート
**内容(「BOOK」データベースより)fromアマゾン
赤ちゃんの泣き声に呼応するかのように肖像画の周囲で起こるポルターガイスト現象。描かれた母親の睨むような視線に恐怖を感じるユウリ。だが、赤ちゃんの行方不明と同時に、その眼差しは慈愛に満ちた微笑みで、ゆりかごに向けられていることに気づく。赤ちゃんは、絵の中に―!?湖畔に建つ全寮制のパブリックスクールを舞台に、霊感少年のユウリが大活躍!!大好評『英国妖異譚』シリーズ第2弾。

嘆きの肖像画―英国妖異譚〈2〉 嘆きの肖像画―英国妖異譚〈2〉
篠原 美季 (2001/12)
講談社
この商品の詳細を見る

感想は・・ またしても「ああ!ちゃんとしてる!」(爆)

いや、ひどい言いようのようですが、これ、かなり気持ちとしては非常に褒めてるんです。
怪奇現象やら幽霊やら妖精やらが登場する世界を、「事実」がしっかりと支えている、と言いたいんですよー
よく言われることですが「もっとも上手な嘘は 沢山の事実の中に一粒まざったもの」だとか。
ファンタジーという「大嘘」は、取り巻く事実関係がしっかりしていてこそ引き立つんです。そういう点が、とても出来がいいですね。

イギリスの学校制度や、主人公ユウリの書く歴史のレポート課題の中身。あるいはそれに対する友人(?)アシュレイのアドバイス、そして問題の「肖像画」の来歴や描写など、(少なくともわたしの知識の及ぶ範囲では)非常に「ちゃんとして」います。
登場する少年たちこそ、BLか少女マンガの住人のようなきらびやかさですが・・ って、いやでもそれも、イラストあってこその話。イラストから受けるイメージを切り離せば、意外なぐらい「ふつう」じゃないかと思われます。

そういう世界だからこそ、この「現代社会にひょっこり見え隠れする怪異」という物語が引き立っているんですよねー
「ものすごく感動した!」とかいうもんじゃないですし、わたしが思い入れるような登場人物たちじゃありませんが、それでもとっても楽しく面白く読みました。

(さて、例によってネタバレ回避を含め分割します)


今回のネタは、「失った我が子の代わりに赤ん坊を求める母親の絵」です。
そしてそれに絡むのは、ナチのユダヤ人大虐殺。
まあどちらも、ありがちと言えばそうでしょうし、特に代わり映えしないように思える・・のです、が。
これに付け加えてイギリスの伝承妖精なんかが出てきちゃうあたりが、なかなかにユニークな感じ。
この「伝承」も、ちゃんとしてます。よく見かけるRPG風ファンタジーじゃなく、ちゃんと知ってて書いてる感じが(わたしにとっては)好感度大ですね。

そうそう・・ それにしても、「ロビン・グッドフェロウ」って、わたしは(ロビン・G・フェロウと名乗って出てきた)最初から「ああ、なるほどねー」とわかっちゃいましたが、この本を読む中高生ぐらいの読者にとってはどうなんでしょう??
こういう「ファンタジーの常識・基本知識」みたいなものって、どのぐらい一般的なんですかねえ? わたしなんぞから見ると、気がつかないユウリがものすごく鈍く、モノ知らずに見えちゃうんですが(まあ16歳とかだし、あんなもん?)、どうなんでしょうね。
まあ・・ こんなこと言ってるわたしだって、どこか(たぶん小説)で読んだからこそ、そういう知識があるわけで(自分が16歳の時、こんなの知ってたかどうかも覚えてないし)、この小説で「そういうものなんだー」と思う読者が多くても、まったく問題はないと思いますけれど。(そういう意味でも、若い読者の多い小説には「ちゃんとした」知識で書いて欲しい・・とか思っちゃうんですけれどね。(^^;; こういう発想がすでにオバハンだなぁと思いつつも。)


と、まあ、そんなゴタクはともかく。
物語としては、「肖像画の謎」(最初からだいたいわかる/紹介文にも書いてあるしw)と、「ユウリが受けたナチのユダヤ人迫害についての暗示またはユウリの見る恐ろしい幻」と、そして冒頭からちらちらと出入りする妖精さんとの三つ巴が、それなりにちゃんと絡み合い、結末に落ち着いていきました。
謎解きというほどの謎はないし、今回はあんまり怖いとも思いませんでしたが、かなり面白く読めたので満足。

まあ・・ 強いて言うなら、「悪霊に取りつかれた品に、人間が取り込まれる」というのは前作と同じパターンなので、ちょっとそのあたりが寂しい気もします。

それに、せっかくの妖精さんの活躍が、ちょっと足りない・・・かしら。描写も少ないんで、「一番面白いところ」なのに、十分活かされてない気がしますしね。
せっかく「チェンジリングを活用?する」という面白いアイデアなのに、結局それでは済まずにユウリの説得という(むしろありきたりな)結末になっちゃいましたし。
確かに、絵に取り憑いていた魂の「本当の赤ちゃんとの再会」をラストに持ってくるには、魂がチェンジリングで誤魔化されてくれちゃってはダメなんですが、出来れば「赤ちゃんの交換」から「真実の判明・ユウリの説得」までの間に、もう一波乱欲しかったですねえ。


そして・・ 前作への感想で「(人物像が)物足りない」と書いた、登場人物たち。
前作よりは個性が見えてきたものの、やっぱりちょっと薄いかな。ロビンとのやり取りとか、寮内の人間関係とか、名前だけ出てくる(そして冒頭のイラスト人物紹介では並んでいる)友人たちについてとか、もちょっと書き込んでもいいんじゃないかしらと思わなくも無いです。

まあでも、シモンもアシュレイも、魅力的だとは思いましたから、こんなもんでもいいのかな。
シモン君がユウリへの執着を脱して、リズ嬢(とっても素敵!)あたりと付き合うようになる日は来る・・のでしょうかね?
危険だとわかっていても、アシュレイの不思議な魅力にひきつけられ、ひきよせられてしまうユウリ君を見ていると・・ ああそうだ、『トーマの心臓』のユリスモールをなにやら思いだしますねえ。
しかもどうやらアシュレイ君は美少年を喰っちゃう人らしいんで、このまま行くと危険、なのかな?(笑/でも彼の目当てはユウリの外見より霊感能力の方じゃないかと思ってるんだけど)


まあ、とにかく、期待に見合った面白さではありました。とても「よく出来たお話」だったと思います。(皮肉じゃないですよー)
ナチにしても、恨みを飲んだ絵にしても、ありがちな素材を上手に料理して、イギリスの伝承をまぶすことで無理のない個性になっているところがいいんですね。ありがちな話になりそうなところを、妖精の登場で上手に救ってるなぁと感心してます。
正直、その「手際」については、まだちょっと生硬な感じがしますけれど、組み合わせの妙、アイデアの良さは紛れもないところ。(そういや一作目も「イギリスのパブリックスクールの寮で、日本式の「百物語」をする」という冒頭は、とってもユニークでした。・・・しかも怖かった。(^^;;)

こんな言い方はアレですが「ホワイトハートならこのぐらい」という感じでもあります。悪い意味じゃなく、ティーン向けノベルという枠組みでは、これ以上オドロオドロしい話も、複雑な社会情勢も、人間関係の機微や「大人の」登場人物も、まあ望めないだろうと。
読んでるわたしにしたって、そんな面倒なもの求めちゃいませんし。(笑)
「この手のものとしては 最良に近い品質なんじゃないか」という気がします。


そんなわけで、次巻以降もとりあえず購入予定、かな。
もっとも十冊以上のシリーズになってるんですよねえ。この先、安易な方向に流れていってしまってないことを祈ります。はい。


(きわめつけに余談ながら、この感想を書いているうちに、「大人向き」のサイコサスペンスでブリジット・オベールというフランスの作家の『鉄の薔薇』というのを、ちょっと思いだしました。詳しく書くとネタバレになっちゃうんで「思いだした」とだけ書いておきますが。こわくて切なくてホロリとする話なんですよー)
スポンサーサイト



* テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌 *
読んだ本の話 * Com(0) * Tb(0) * page top↑ * [Edit]
Comment to this entry
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
Trackback to this entry
インフォメーション
猫写真ブログ作りました.。
うちの外猫たちを
見てやってください
最新の記事
カテゴリ+展開メニュー
  • 猫写真(5)
  • 読んだ本の話(60)
  • ゲームの話:金色のコルダ(37)
  • ゲームの話:遥かなる時空の中で(25)
  • ゲームの話:乙女ゲーム(23)
  • ゲームの話:BLゲーム(12)
  • ゲームの話:幻想水滸伝(30)
  • ゲームの話:その他(33)
  • 見たものの話:映画とテレビ(8)
  • ブログと日常(141)
  • ネットライフ(14)
  • 未分類(1)
過去ログ*ピックアップ
プロフィール

あtoん

Author:あtoん
性別:女
年齢:三十路後半
家族:祖母&母&妹 平均年齢57.25歳

学術書でもBLでも。バッハでもアイドルポップスでも。
ジャンルがどうでも「面白いものは面白い」し「ダメなものはダメ」だと思うのですよねー

ゲーム好きに40の質問への回答
「元」女子高生に50の質問への回答
オススメミステリ

ブロとも申請フォーム
Tree-Comment
月別アーカイブ
リンク
順不同。というか、登録順。
勝手にリンクしています。
リンクしちゃダメという方はご連絡ください
情報源サイト
このブログをリンクに追加する
ブログ内検索
あtoんへのメール
匿名・匿アドOK。お気軽にどうぞ

名前:
メール:
件名:
本文:

Amazon サーチボックス