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読了:『バベルの薫り』 
2006 / 07 / 15 ( Sat )  12:06
あいむばっくなう!
・・・と、戻ってきました。ふうぅ。暑いですねえ。

そして妙に厚いハードカバーを読み終わりました。

『バベルの薫り』野阿 梓  早川書房
**内容(「BOOK」データベースより)fromアマゾン
心霊科学研究所マホロバ出身の稀代の霊能者・姉川孤悲は祖国日本の霊的危機を救うべく、学園都市・井光に遣わされた。同行するのは、孤悲自らが月のチャイルド・マーケットより救い出した林譲次。井光は井光学園によって、学園都市としてのイメージを形成している。その井光学園の歴代の学園理事をつとめるのが塔家、そして、巨大な権力を握る当主は美貌の女性・塔あけぼのだった…。多彩な人物たちが妖しく織りなす、書き下ろしSF巨篇。
 →画像はないのでアマゾンにテキストリンク バベルの薫り(単行本&文庫本2冊)

数日前にこれはSFじゃない!と叫んだんですが。はて。
最後まで読むと、「もしかしてSFかも?」という気もしますねえ。(^^;; まあ微妙なところではあるんですけれど。
「パラレルワールドの日本を舞台とした伝奇小説」と呼ぶべきじゃないかと思いながら読んでたんですが・・ うーん。「伝奇SF」というジャンルがあるなら、その辺でしょうか。
しょっぱなから「霊的危機」ですからね! 何と言ったって。

まあ、面白かったです。はい。
ものすごく大ざっぱに言えば・・ うーん、強力な超能力者でしかも古典的な右翼っぽい国粋主義者の姉川孤悲(あねかわこい/ちなみに美女)が、謎の邪悪な超能力者に挑む!・・という話でしょうか。それに色々と一癖も二癖もある登場人物たちが絡むんですが。
結果的には「勧善懲悪」ではなく。それどころではなく。

とにかく、パワフルな話でした。
本も分厚いんですが(今測ったら3センチ5ミリ)中身も分厚い。520ページ余にギッシリ二段組ですからねー
細かな描写とエピソードと蘊蓄もギッシリ。それでも最後はちょっと駆け足気味だったような。
まあとにかく「圧巻」というやつでしょうか。このボリュームあってこその話でもありますし。

メインのアイデアは、まあわりにシンプルだと思うんですが、そこにたどり着くまでに、神霊術?あり、陰陽道っぽい話あり、カバラの秘法あり、コンピュータだのネットワークだのあり、スパイ小説もどきあり、政治権力談義あり・・ と、とにかく盛りだくさん。ああ、「魔辱」なんてタイトルの章もあって、そこだけ取り出せばエロ小説もどきの描写(SM多め)もあり、ですね。
内容だけでなく、文体も「過剰」に偏っている感じです。用語法・用字法がちょっと独特。漢字表記にカタカナのルビ(ふりがな)が多いのは、SFだからということもあるでしょうが、一語に複数の意味を持たせる意図もあるのかも。それも含め、文字数ページ数以上に中身が重いです。
で、わりにシンプルなアイデアを元にしたシンプルな(シンプルでありうる)ストーリーを、この「過剰さ」が補って、むしろ周辺こそがメインというか。周辺の過剰さゆえに成立する物語だというか。
本そのものの物理的な厚さ重さもまた、物語を演出する要素の一部かなとも思います。


(長くなりますし、とりあえず分割しましょうか。ネタバレはほとんどありませんが。)

この話、山ほどの蘊蓄や情報が詰め込まれていますが、それもまた演出の一種でしょうか。これを「参考に」するのは危険きわまりない。

神道と陰陽道とカバラ秘術が混ざったような心霊話は、まあかなり無節操に混ざってますから、これを本気でとったらいけない。(^^;; わたしはあんまりこの手は詳しくないですが、それでも「混ざり具合」「素材のセレクト」を楽しんじゃったりしてました。「あーそれを持ってきて、これと組み合わせるかー」みたいな感じで。『陰陽師』ブーム前ということもあってか、陰陽道系はちょっと弱いのかな。「日本の国体を脅かす霊的危機」なのに、なんでカバラとか旧約聖書のバベルの塔とか出てきますかねー
物語のキーの一つとして、心霊素子のコンピュータなんてものも出てきますが、これもよく考えるとわけのわかんないシロモノですし。「それがわざわざコンピュータである必要」ってのが、よくわかんないんですよ。

政治(権力)談義は、いかにも冷徹で理想主義を廃した議論に聞こえるんですが、ま、冷静に考えればけっこう無茶。スパイ小説標準として見れば、それほど悪くもないんですがねー
世界のビッグパワーが米・ソ・日・ハノイ連邦・・になったりしてるのは、まあ当時(1991年発行)ソ連邦の崩壊までは予想できないから仕方がないとも思いますが。キーの一つになる「スメラギレポート」という天皇制論もどき?も、まあ、「ネタとしちゃ面白い」というところ。

メインで動く姉川孤悲は古典的な右翼(「神国日本!」てな感じ)の国粋主義者という設定ですが、どうも小説全体の語彙は60年代の学生運動風。孤悲が潜入しようとする学園都市「井光」の学生達は(ものすごく中央集権的で思想統制のきつい)日本政府に批判的ですが、彼らの用語はモロにかつての学生運動のもののようで。あんまり「近未来」っぽくありません。「ああいう用語」が、革命家っぽいというイメージなのかもしれませんが、せっかくの「近未来」設定に対して、もったいない気もしますよね。

と、ケチつけてるみたいな書き方をしましたが、これがそれぞれ「それなりの説得力」(とりあえず読んでる間はその理屈を受け入れてても問題ない感じ)と、「細かな理屈や描写」を伴って出てくるところが見事なんです。
とりあえず三種類を例に出しましたが、「新ガウディ派」の建築物とか、序章の月面都市でのスパイアクション風チェイスとか、シンクタンクの一員のような顔をして実はヴァティカンのスパイ(!)という超能力者とか(確かに「霊的危機」とか言うなら、ヴァティカンの勢力は大きそうですが)、かつての被差別民である特殊能力者集団とか・・・ それだけをネタに小説の1つや2つ書かれちゃいそうなアイデアが細部にたっぷり詰まってます。それも無節操なぐらい多種多様に。


これがすべて一ヶ所に収束する・・ という話だったら、すごかったんですが、さすがにそういうことはなく。(^^;;
いやむしろ「収束」を否定するのが、物語の結末でもあります。究極のアナーキズムみたいな感じ。
(これは出版当時の「この手」の小説の流行だったのかな? 菊池秀行ので同じようなテイストを感じたことがありますねー)
その「収束や単純な構造化を否定し、世界にカオスを!」とでも言わんばかりの結末に、この無節操なまでの多様性が、実はとっても似合っているのかもしれない、なんて思ったりもして。
ストーリーラインだけだったら意味のない小説なんでしょうね。そこまでの情報と人物と出来事の渾沌とした状態が、物語の結末そのものでもある・・ のかな。そこにいたる500ページがあってこそ、あの結末が「結末として」成立するんだろうなぁ・・ なんて思います。(でもそれまでの迫力に比べ、結末はちょっと理に落ちて(カオス的とは言え)しまったかも。)

でも面白かったですよ。「読んだー!」って感じがしましたわ。(笑)
作者さんは美少年趣味のようですが、個人的には「大人の男の色気」みたいなエピソードもあったら嬉しかったんですが。(おほほw)女性については、「少女」はほとんど出てこず、「成熟した女の色気」が強調されてるだけに、余計に、ね。(「少女」が担いがちな役割を「少年」が担ってるという感じですね。)


---
ものすごく余談なんですが、最近読んでた「ライトノベル」って、「情報量」が少ないんだなぁと思いましたよー
なにもこんなにカオティックにあれこれ盛り込まなくてもいいけど、ライトノベル系だと、ストーリーとキャラクター「しか」無い、ことが多いんですかね。作者さんの下調べとか知識とかが出てくる部分が少ないような。
・・・まあ、小説に、そういう「情報」的なものが必須かどうかはわかりませんが、わたしとしては、多少なりとも、そういう「情報」「知識」っぽいもの(信用度はともかくも)が含まれてるほうが好みなのかなぁと気がつきました。
もともとが、衒学的な名探偵の多い海外ミステリが原点ですしねー(^^;;
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